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3Dプリンター入門|電子工作ケースの作り方

업데이트: 2026-03-19 18:20:04田中 悠斗

電子工作のケースを3Dプリンターで自作すると、基板も配線もぴったり収まって気持ちいいのですが、実はここ、めっちゃつまずきやすいポイントが詰まっています。
筆者もArduinoの小型センサーボード向け壁掛けケースを作ったとき、USBコネクタまわりの逃がしを0.3 mm削りすぎてフタが閉まらず、ポート開口だけでなくケーブルの根元側まで余裕を見る設計に切り替えました。

この記事では、これから手元の基板で「最初の1個」を作りたい人に向けて、全体設計から材料選び、FDMと光造形の使い分け、肉厚2 mm・内部クリアランス0.5 mm・穴やかみ合わせ部±0.25 mmといった出発点の数値まで。
Protolabs NetworkProtolabs Networkやアルテックやアルテックの整理も踏まえて一気通貫で解説します。
結局、きれいで安全なケースは気合いではなく、どこを逃がしてどこを締めるかを最初に決め、公差は小さなテストピースで先に詰めると失敗が減ります。
筆者がはめ合い確認用の試験片を2回出力して勘合を追い込んだ手順も、見比べるべき寸法差や写真で押さえたい図解ポイントとあわせて紹介していきます。

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3Dプリンターは電子工作のケース製作と相性がいい理由

電子工作ならではの課題整理

電子工作のケース製作が厄介なのは、単に「箱を用意すれば終わり」ではないからです。
キヤノンの3Dプリンター解説でも触れられている通り、3Dプリンターは3Dモデルをもとに材料を積み重ねて立体物を作る装置ですが、電子工作ではその立体物の中に基板、コネクタ、配線、固定部品まで同居させる必要があります。
ここで既製ケースを使うと、まず外形がちょうど合わない問題にぶつかります。
基板サイズが入っても、高さが足りずピンヘッダやコネクタがフタに当たる、逆にケースが大きすぎて中で基板が遊ぶ、といったズレが起きます。

基板そのものは小さくても、実際にはUSBケーブルの差し込み代やケーブル根元のブーツ形状まで見ないと、開口部だけ合っていても挿せないことがあります。
筆者も秋月電子通商で定番のSK-5透明プラケースを流用して、Raspberry Pi Pico用に穴を手加工したことがあります。
SK-5は70×90×23 mmで、参考として「10個800円(執筆時点の参考価格、流通により変動)」といった低価格帯で出回ることがありますが、最新の販売価格は各販売ページを確認してください。
ところが、Micro‑USBの口だけ通ればよいと思って面取りを浅く仕上げた結果、USBケーブルの根元がケース端に干渉して、差し込んでも奥まで入りませんでした。
穴の位置だけでなく、入口の斜面や逃がし形状まで必要だったわけです。

電子工作では内部の「支え」も不足しがちです。
既製ケースには、基板を留めるボス、電池を押さえる壁、スペーサー、配線を通すダクトが都合よく入っているとは限りません。
結局、両面テープで仮固定したり、スポンジで高さを合わせたりして、その場しのぎになりやすいです。
見た目以上に効くのが配線経路で、電源線や信号線がフタ裏に回り込むと、閉めた瞬間に被覆を押したり、分解時に引っ掛けたりします。
ケース設計の段階でボスやリブ、配線の通り道を盛り込める3Dプリントは、この時点で相性がいいわけです。

Protolabs Networkの筐体設計ガイドでも、部品レイアウト、固定、配線、アクセス性を初期段階から考える前提になっています。
電子工作のケースは、外から見える形より先に、中の都合を整理しないと破綻します。
既製ケースの追加工だけで乗り切れる場面もありますが、穴が増えるほど見た目は散り、ヤスリがけのムラや割れ欠けも目立ちます。
きれいな四角い箱に見えても、実務では「どこに何を固定するか」が先に来るのが電子工作ケースの難所です。

3Dプリント自作 vs 既製ケース追加工の判断

既製ケースにも強みはあります。
SK-5のように70×90×23 mmで約100円/個相当という実例はわかりやすく、入れたい基板や部品がたまたまぴったり収まるなら、最短・最安の選択肢になります。
既に透明で、仕上がりも安定していて、穴を数か所開けるだけで完成するなら、3Dモデルを一から描くより速いです。
時間優先の試作では、これは素直に強いです。

既に透明で、仕上がりも安定していて、穴を数か所開けるだけで完成するなら、3Dモデルを一から描くより速いです。
時間優先の試作では、これは素直に強いです。
逆に、ぴったり合わなかった瞬間に追加工の負担が一気に増えます。
USBやスイッチ、LED、固定ネジ、電池ボックスの位置が少しずつズレると、穴を開け足し、削り、逃がしを作り、内部はスペーサーでごまかす流れになりがちです。
これなら最初から3Dプリントで作ったほうが、穴位置も内部構造も一体で設計できます。
パラメトリック設計にしておくと、基板サイズや肉厚を変えた派生ケースも作りやすく、試作を重ねるほど差が出ます。

判断材料を並べると、違いは次のようになります。

項目3Dプリント自作ケース既製ケース追加工
自由度外形、穴位置、内部ボス、リブ、配線ダクトまで設計に含められる箱の外形は固定。穴追加と内部の後付け対応が中心
スピード初回は採寸とCAD作業が必要。ただし2回目以降の修正は速い合う箱が見つかれば最短。合わないと加工時間が積み上がる
学習コストCADと造形条件の理解が要る穴あけと切削の基本で始められる
見た目のコントロール開口形状、面取り、文字入れまで統一できる元のケース品質に依存し、加工跡が見た目に残りやすい

使い分けはわりと明快です。
まず、時間を最優先するなら既製ケース+追加工です。
展示会前の仮ケースや、机上評価だけの試作ではこれが速いです。
逆に、フィット感と拡張性を重視するなら3Dプリントが向いています。
将来的にセンサーを足す、電池を内蔵する、USB口を別の位置にしたい、といった変更が見えているなら、最初にCADへ落としておくほうが後で楽になります。

筆者は、穴が3か所を超えたあたりから「既製ケースを直す作業」より「作り直す作業」のほうが筋がいいと感じます。
電子工作のケースは、外側の四角より内側の都合が支配的です。
そこを既製品に合わせるのか、ケース側を回路に合わせるのかで、作業の質が変わります。

1個からの試作サイクルが速い理由

3Dプリンターが電子工作と噛み合う一番の理由は、1個だけ作る試作サイクルの短さです。
切削や金型の発想だと、1個物は割高になりがちですが、3Dプリントは1個から形にできます。
採寸して、CADで箱を描いて、その日のうちに実物を当てて修正する流れが取りやすいです。
リコーの解説が整理している通り、積層造形は従来加工と違って、形状の複雑さがそのまま製造ハードルになるわけではありません。
電子工作のケースで欲しいのは、まさにその複雑さです。

たとえば基板の固定ボスを立て、横に配線ダクトを通し、フタ裏に電池の押さえを付ける、といった構造を最初から一体化できます。
既製ケースだと、ボスはスペーサーを貼る、配線は結束バンドで寄せる、電池はスポンジで押さえる、という別部品の足し算になります。
3Dプリントなら、ケースそのものが治具と固定具を兼ねます。
この差が、組み立て時間だけでなく、分解して直すときの気持ちよさにも効きます。

NOTE

基板ケースの初回設計では、外形だけ先に作るより、基板・コネクタ・固定ボスの3点を先に置いたほうが破綻しません。
箱はその外側に被せるほうが、穴位置の手戻りが減ります。

試作が速いのは、修正点がそのまま次のデータに反映されるからでもあります。
既製ケースの手加工は、一度削りすぎると戻せません。
3Dプリントでは、USB開口を少し広げる、ボスを0.5 mmずらす、フタ裏を薄く逃がす、といった変更をモデル側で持てます。
筆者がワークショップで初心者のケース設計を見ると、最初の失敗は「寸法ミス」より「逃がし不足」が多いです。
だからこそ、1回で完成させるより、1回目で当たりを付けて2回目で詰める前提のほうがうまく進みます。

Raspberry Pi Picoのような小型基板でも、このループは効きます。
基板外形51×21 mmに対して、ケース内側は少し余裕を持たせ、USB開口はコネクタ本体だけでなくケーブル側の厚みまで含めて考える。
そうやって1回目の実物合わせをすると、図面上では見えなかった干渉がはっきり出ます。
既製ケース流用で筆者がMicro‑USBの根元に引っ掛けた失敗は、まさにその典型でした。
3Dプリントなら、開口部の四角穴に加えて、入口に斜面を付ける、左右に逃がしを広げる、といった修正を次回出力にそのまま載せられます。

この「採寸して、すぐ形にして、すぐ直す」という回し方は、電子工作のように部品構成が変わりやすい分野で効きます。
センサーを1枚追加しただけで配線経路が変わる、コネクタを横出しから上出しに変えたらフタ形状も変わる、という変化を、ケース側がすぐ吸収できるからです。
見た目の箱を作る道具というより、回路と機構の間をつなぐ調整ツールとして3Dプリンターを見ると、相性の良さがはっきり見えてきます。

まず知っておきたい3Dプリンターの基本:FDMと光造形の違い

方式の仕組み

3Dプリンターは、3Dモデルを薄い層に分けたデータをもとに、材料を1層ずつ重ねて立体物を作ります。
ここで使うのがスライサーです。
スライサーは、層厚、充填率、サポート材の有無、外周の厚みなどを設定して、プリンターが読める造形データに変換する役割を持ちます。
キヤノンの3Dプリンター基礎解説でも、この「積層して形にする」という考え方が3Dプリンター全体の共通点として整理されています。

個人向けで主流なのは、FDM/FFF(熱溶解積層)と、SLA/DLP/LCD系の光造形です。
まず結論を置くと、日常使いのケースや大きめの筐体はFDM、小型で見た目重視のケースや細かい意匠部品は光造形と考えると判断しやすくなります。

FDM/FFFは、フィラメントと呼ばれる樹脂の線材をノズルで加熱して溶かし、細い線として押し出しながら積み上げる方式です。
たとえばPLAやPETG、ABS/ASAといった材料がここに入ります。
ホットエンドで加熱された樹脂を、XY方向に動くノズルで描画し、1層終わるごとにZ方向へ少しずつ高さを上げていきます。
表面に積層の筋が見えやすい一方で、材料費を抑えやすく、造形サイズも取りやすいので、電子工作のケースではまず候補に上がる方式です。

一方の光造形は、液体レジン(光で硬化する樹脂)に紫外線を当て、必要な部分だけを硬めながら積層していきます。
SLAはレーザーでなぞる方式、DLPはプロジェクターのように面で露光する方式、LCDは液晶マスク越しに面露光する方式です。
細かい仕組みは違っても、液体レジンを光で固めるという点は共通しています。
アルテックの方式比較でも、FDMと光造形は表面品質や後処理の流れが大きく異なる方式として整理されています。

造形結果の見え方も、仕組みの違いがそのまま出ます。
FDMはノズル径と積層の線が形に残るので、平面や曲面にうっすら段差が見えます。
対して光造形は、微細なディテールや文字、角のシャープさが出やすく、同じサイズのパーツでも見た目の密度感が一段上がります。
手持ちの光造形機でスイッチキャップを作ったときも、文字まわりの輪郭や角の立ち方がきれいで、寸法の再現も狙いやすいと感じました。
反面、造形が終わった瞬間に完成ではなく、洗浄してから二次硬化まで進めて初めて安定した部品になります。
この差は、後の運用で効いてきます。

{{product:4}}

ケース製作での向き不向き

電子工作のケースで見ると、FDMは実用品としてのバランスが取りやすい方式です。
材料費を抑えやすく、サイズのある箱物も出しやすく、壁厚を持たせれば剛性も確保しやすいからです。
壁掛けケースや卓上のセンサーボックスのように、ある程度の大きさがあって、多少の積層痕よりも強度や作り直しのしやすさを優先したい場面では、FDMのほうが素直にまとまります。
筆者がFDMで作った壁掛けケースも、サポートを外したあとに角を軽く面取りして、見える面だけ少しヤスリを当てる程度で実用品として十分でした。
見た目を工業製品そのものに寄せるというより、必要な位置に穴があり、ネジ止めできて、日常で使っても困らない形に持っていくのが得意な方式です。

材料選びまで含めると、FDMはさらに判断しやすくなります。
試作や寸法確認ならPLA、本番運用ならPETG、耐熱や屋外寄りならABS/ASAという分け方が基本です。
ケース用途ではPETGが扱いやすく、強度と耐熱のバランスも取りやすいので、最初の実用品として選ばれやすい材料です。
ABS/ASAは熱に強く実用向きですが、反りや収縮が出やすく、造形時の管理まで含めた難しさがあります。

光造形が光るのは、小型で見た目を詰めたいケースです。
たとえば、操作ボタンの周囲に細かい段差を入れたい、薄いスリットを入れたい、表示窓や装飾のエッジをシャープに出したい、といった条件ではFDMより有利です。
小型センサーケース、つまみ、スイッチキャップ、治具、パネル部品などは光造形と相性がいいです。
特に前面パネルのように「手で触れたときの印象」が大事な部品では、表面の滑らかさが効いてきます。

一方で、ケース全体を光造形で作れば万能かというと、そうではありません。
薄いフックやネジ周辺のように力が集中する部分では、材料選定と形状の詰めが必要です。
落下や繰り返しの開閉を前提にした筐体では、見た目だけでなく、ねじ止め部の肉厚、ヒンジまわりの応力、ケーブルの引っ張り方向まで考える必要があります。
日常で雑に扱われる前提なら、FDMで肉厚を確保したケースのほうが扱いやすいことが多いです。

ケース用途の視点で整理すると、違いは次のようになります。

項目FDM/FFF光造形(SLA/DLP/LCD)
仕組み溶かしたフィラメントをノズルから押し出して積層液体レジンに光を当てて硬化させながら積層
ケース用途壁掛けケース、卓上ケース、日常使いの筐体小型ケース、前面パネル、つまみ、意匠部品
表面品質積層痕が見えやすいなめらかで細部が出やすい
実用強度の取り方肉厚や材料選定で確保しやすい形状とレジン選定を詰める必要がある
サイズ展開比較的大きい箱物に向く小型部品や高密度な形状に向く
向く結論日常使い・強度重視小型・見た目重視

ケース設計では、造形方式の違いとは別に、基板固定やクリアランスの考え方も効いてきます。
Protolabs Networkの筐体設計ガイドで示されているように、最小肉厚2 mm、内部クリアランス0.5 mmは出発点として扱いやすい値です。
これをFDMと光造形のどちらで作るかに重ねると、FDMは壁厚を少し増やして安心側に寄せる、光造形は外観面と勘合部の精度を活かす、といった方向で考えやすくなります。

後処理・安全性・運用コストの違い

方式選びで迷うとき、見落としやすいのが造形後の作業です。
プリンター本体の価格だけでなく、片付け、臭気、消耗品、作業場所まで含めると、FDMと光造形は運用感がだいぶ変わります。

FDMの後処理は、基本的にはサポート除去、糸引きの除去、必要ならヤスリがけです。
PLAやPETGなら、ニッパーでサポートを外して、縁を整えればそのまま組み立てに入れる場面が多いです。
ケース用途では、外観面だけ軽く整えて、内部はそのまま使うことも珍しくありません。
気を付けたいのは、積層痕そのものより、反りやブリッジの崩れ、冷却不足による角の甘さです。
特にABS系は造形温度が高く、反り対策としてエンクロージャーや換気をセットで考える必要があります。

光造形は、造形が終わったあとに未硬化レジンが表面に残るので、そのまま触れません。
まず洗浄し、乾燥させ、サポートを外し、さらにUVで二次硬化します。
洗浄にはIPA(イソプロピルアルコール)がよく使われますが、可燃性があるので保管や作業場所まで含めた管理が必要です。
筆者の手元でも、光造形で作ったスイッチキャップは造形直後の見た目だけなら満足度が高かったのですが、洗浄槽の用意、IPAのにおい、硬化前パーツを触らないための手袋運用まで含めると、FDMより作業の段取りが増えます。
ここは方式の性格差がそのまま出るところです。

WARNING

光造形は「出力したら終わり」ではなく、洗浄と二次硬化までが1セットです。
FDMは造形面の仕上げ、光造形は化学的な取り扱いが中心、と捉えると作業の違いが整理できます。

安全面も方向性が異なります。
光造形では、未硬化レジンを皮膚に付けないこと、換気を確保すること、IPAを火気の近くで扱わないことが基本になります。
洗浄後の廃液や、レジンが付いたペーパー類の処理も、通常の樹脂片とは同じ感覚で扱えません。
FDMはレジンほど化学処理の手間はありませんが、ノズルやヒートベッドが高温になること、ABS系などでは臭気対策と換気が必要になることを押さえておきたいところです。

運用コストは、一般にFDMのほうが読みやすいです。
フィラメントは使用量が見えやすく、サポート材も同じ材料で済むことが多いからです。
光造形はレジン本体に加えて、洗浄用IPA、手袋、ペーパー、場合によっては洗浄・硬化機のような周辺機材まで含めて考える必要があります。
見た目の仕上がりに対して支払うコストという意味では納得感がありますが、ケースを何個も試作する運用ではFDMの気軽さが勝ちやすいです。

比較軸をまとめると、方式ごとの差は次のように見えてきます。

項目FDM/FFF光造形(SLA/DLP/LCD)
表面品質積層痕が残るなめらかで細部が出る
強度の考え方肉厚と材料選びで実用品に持っていきやすい形状とレジン特性を踏まえて使い分ける
後処理サポート除去、バリ取り、必要に応じて研磨洗浄、乾燥、サポート除去、二次硬化
材料コスト感比較的低いレジンと洗浄用品を含めると負担が増える
臭気・換気PLAは扱いやすく、ABS系は換気が欲しいレジンとIPAの管理で換気が前提になる
安全装備高温部への接触防止が中心手袋、換気、洗浄液の管理が中心

ケース製作だけに絞るなら、まずはFDMで形と寸法を詰め、外観や微細ディテールを優先する小物で光造形を使うという分け方が実践的です。
両者は競合というより、同じケース作りの中で得意分野が違う道具として見ると整理しやすくなります。

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電子工作ケース向けに必要な道具・ソフト・材料

CAD→STL→スライサー→出力の流れ

電子工作ケースを作るときの流れは、3D CADで形を作り、STLまたはOBJに書き出し、スライサーでG-codeへ変換し、3Dプリンターで出力して、必要な後処理を入れる、という順番で捉えると頭が整理できます。
キヤノンの3Dプリンター基礎解説でも、設計データを積層造形用データに変換して出力する流れが基本として整理されています。
ケース作りでは、この各段階の役割がはっきり分かれているのがポイントです。

3D CADは、ケースの外形、板厚、ねじボス、コネクタ開口、基板固定位置を決める場所です。
ここで寸法の筋が通っていないと、その後の工程をどれだけ丁寧に回しても組み上がりません。
初心者ならFreeCADのようなパラメトリックCADが相性良好です。
単なる箱として描くのではなく、外形寸法、板厚、逃げ寸法、ボス径を変数で持っておくと、あとで基板やコネクタが変わったときの修正が一気に軽くなります。
筆者はFreeCADのスプレッドシートに板厚とネジボス径を入れておき、部品の差し替えが出たときにそこだけ直して全体を更新する形で進めることが多いです。
基板の変更でボス周りだけ手で追いかける作業が消えるので、試作の2回目以降がぐっと楽になります。

CADで作ったモデルは、そのままでは多くの家庭用3Dプリンターに送れないため、STLやOBJに書き出します。
STLは形状を三角形メッシュで渡す定番形式、OBJは形状に加えて属性を扱える場面がある形式、という理解でまず十分です。
ケース用途ではSTLが登場する場面が多いですが、どちらも「CADの設計データを、造形工程へ受け渡す中間形式」と捉えると迷いません。

次のスライサーは、STLやOBJを読み込み、積層方向、層厚、外周数、インフィル、サポート、ブリムやラフトを決めて、プリンターが読めるG-codeを作る役です。
CuraやPrusaSlicer系の画面を見ながら設定すると理解しやすく、CAD画面で「こう作ったもの」が、スライサー画面で「どう積むか」に切り替わる感覚がつかめます。
ケース向けの初期値としては、層厚は細部を欲張りすぎず標準寄り、外周数は少なすぎない設定、インフィルは箱物として必要十分な範囲から始めると失敗が減ります。
ケースは見た目以上に外壁が効くので、剛性をインフィルだけで稼ぐより、外周数と板厚を先に整えたほうが結果が安定します。
サポートはコネクタ開口や内部の張り出しを支えるために使いますが、不要な場所まで増やすと除去跡が荒れます。
ブリムは接地面の小さい部品や反りが気になる形で有効、ラフトはさらに定着を優先したいときの選択肢です。

NOTE

ケース用途では、まず「外形が合うこと」「ふたが閉まること」「コネクタが通ること」を優先し、表面の細かい見た目は後から詰めるほうが歩留まりが上がります。
最初の1個で詰めるべきなのは意匠より寸法です。

出力後は、サポート除去、バリ取り、必要なら軽い研磨、ねじ穴の調整、インサートの圧入といった後処理に入ります。
ここまで含めてケース製作です。
Protolabs Networkの筐体設計ガイドで示されているように、3Dプリント筐体では最小肉厚2 mm、内部部品のクリアランス0.5 mmが出発点になります。
さらにポート周辺は0.2〜0.3 mmから詰める考え方が使いやすく、画面イメージで言えば、CADで寸法を設計し、スライサーで積層条件に落とし込む、という二段階で整理するとブレません。

採寸と固定部品の準備

電子工作ケースで失敗を減らすには、プリンター本体より先に計測工具と固定部品をそろえたほうが効果的です。
最低限ほしいのはデジタルノギスです。
一般的なデジタルノギスは最小読取値0.01 mmの製品が多く、ミツトヨ系では器差±0.02 mmクラスの例があります。
ケース設計では基板の外形だけでなく、コネクタの位置、部品の突き出し、スペーサー高さ、ボス外径まで追うので、定規だけだと途中で詰まります。
採寸の対象は、基板寸法、固定穴位置、コネクタの口、ケーブルのブーツ外形、内部で干渉しそうな背の高い部品です。
ここ間違えやすいんですが、電子工作ケースは「基板が入る」だけでは終わりません。
ネジを回すドライバーの逃げ、コネクタの抜き差し、ふた側のリブや爪との干渉まで含めて成立して初めて完成です。
FFF方式の線形精度目安は0.2%〜2%とされるので、ぴったり寸法で描くより、組み付けのための逃げを前提にしたほうが現実的です。

固定部品は、最初からM2とM3の両方を少量持っておくと困りません。
電子工作の基板固定ではM2かM3が中心で、M2は小型基板向け、M3はケース側のボスやふた固定まで含めて扱いやすいサイズです。
規格上、M2の並目ピッチは0.4 mm、M3の並目ピッチは0.5 mmです。
これに合わせて、ネジ、ナット、六角スペーサー、樹脂または金属スペーサーを用意しておくと、基板を浮かせる、ふた裏に部品を逃がす、底面の配線を避けるといった設計がやりやすくなります。
USBや電源ジャックのようなコネクタ類も、基板実装後の実物で採寸してから開口を決めたほうが、図面上の理屈よりずっと確実です。

ねじ止めの考え方は、ヒートセットインサートを使うのか、セルフタップで樹脂に直接立てるのかで分けて考えると整理しやすくなります。
ヒートセットインサートは真鍮製が一般的で、M2やM3向けが豊富です。
半田ごてで熱圧入でき、繰り返し分解するケースでは特に効きます。
セルフタップは部品点数が減るのが魅力ですが、ボス径、下穴、入口面取りを詰めないと割れます。
筆者も以前、M3セルフタップをそのまま樹脂ボスにねじ込んで、締め切る手前で縦に割ったことがあります。
原因はボスの肉厚不足に加えて、下穴が攻めすぎだったことでした。
そこからは、下穴径を少しずつ変えて食いつきと割れのバランスを見るようになり、分解回数が多い箇所はヒートインサート併用に切り替えました。
3Dプリント向け実務では、M3の下穴をφ3.2〜φ3.5程度で調整する例が多く、ヒートインサートはM3向けでφ4.0〜φ4.8程度のレンジがよく使われます。
ケースのボス設計は、この前提を持っているだけで成功率が変わります。

設計観点としては、ボスの外径をねじサイズだけで決めないことも効きます。
ねじが入る穴の周囲にどれだけ樹脂を残すか、圧入時に熱で崩れないか、ふたを締めたときに応力が一方向へ寄らないかまで見る必要があります。
電子工作ケースは何度も開けることが多いので、一発で固定できることより、何回開閉しても壊れない構成のほうが実用品としては上です。

初心者の材料選び

最初の材料は、FDMならPLAかPETGのどちらかから入るのが堅実です。
PLAを推す理由は、反りが少なく、出力条件がつかみやすく、ケースの形状確認に向いているからです。
一般的な造形温度例も160〜230℃の範囲で扱われることが多く、エントリー機でも運用しやすい部類に入ります。
対してPETGは、PLAより実用品寄りのバランスがあり、粘りが出て、少し荒く扱うケースでも持たせやすいです。
見た目だけの試作で終わらず、そのまま卓上機器の筐体として使いたいならPETGの納得感が高いです。

PLAとPETGの差は、初心者目線では「まず形を出すか」「そのまま使うか」で考えるとわかりやすくなります。
PLAは寸法確認や内部構造の検証に向き、PETGはケーブルを抜き差しする、ねじで締結する、多少の衝撃が入る、といった実用品の文脈で一段安心感があります。
JLC3DPの電子筐体ガイドでも、材料選定は見た目だけでなく、使用環境と組み立て方法まで含めて考える流れになっています。
電子工作ケースは熱源の近くや車内放置のような条件が入ることもあるので、温度条件まで視野に入れるとPETGが候補に上がりやすい、というのが実感です。

ABSやASAは、屋外や高温域を含む用途で候補になります。
ABS系は耐熱面で魅力がありますが、反り対策、臭気対策、エンクロージャー、換気までセットで考える必要があります。
ASAは屋外適性の面で強みがあります。
ここは前の方式比較ともつながりますが、最初の1個を作る段階でいきなりABS系に行くと、形状の問題と材料特有の難しさが重なります。
ナイロンはさらに吸湿対策まで入るので、ケース作りの入口としては優先度が下がります。

光造形を使う場合の材料は別系統ですが、安全用品の考え方は共通で持っておきたいところです。
FDMでも保護メガネがあるとサポート除去や穴さらいで安心ですし、光造形では手袋が前提になります。
未硬化レジンやIPAを扱う作業では、手で触らない、換気を確保する、火気を近づけない、という運用がそのまま品質にもつながります。
ABSやASAをFDMで回すときも、換気やエンクロージャーの有無で造形の安定度が変わります。

プリンター本体の価格帯は広く、個人向けの樹脂・フィラメント機はおおむね200〜1,000ドル帯、エントリー向けFDMなら200ドル以下クラスからも存在します。
ただ、ケース作りの成否を左右するのは本体価格だけではありません。
3D CAD、STL/OBJ、スライサーの役割を分けて理解して、ノギスと固定部品を先に整え、PLAかPETGで1回組める状態を作るほうが、結果として遠回りになりません。
電子工作ケースは「箱を出力する作業」ではなく、「部品を固定して、配線して、開閉できる筐体を成立させる作業」だからです。

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ケース設計の基本:測る・逃がす・固定する

設計前チェックリスト

ケース設計は、まず「何を入れるか」ではなく「どこを基準に測るか」を決めるところから始まります。
筆者は最初に、基板外形のX/Y/Z、コネクタ位置、ふた側へ飛び出す部品高さを同じ紙かCAD上にまとめます。
平面寸法だけ見て進めると、組み立て段階で高さ方向が破綻しやすいからです。
たとえばRaspberry Pi Picoなら基板外形は51 mm × 21 mmなので、この外周を基準にしてUSB、ピンヘッダ、固定点、配線の通り道を重ねていくと、どこに壁を立ててよいかが見えてきます。
ヘッダ付きでふたを閉めるなら、上方向の余白まで含めて最初に押さえておく必要があります。

ここ間違えやすいんですが、コネクタは「口の位置」だけでは足りません。
コネクタ高さ、差し込み方向、ケーブル曲げしろまで含めてケースの占有空間として扱います。
USBや電源ジャックの周辺は、ポートの穴が合っていても、プラグ根元のブーツや指が入る空間が足りずに挿抜できないことがあります。
筆者もRaspberry Pi PicoのMicro‑B周りで、ハウジングがケース内壁に当たって最後まで入らないことがありました。
見た目ではほぼ合っていたのですが、現物を当てると内壁と干渉していて、開口の横方向に0.3 mm逃がしを追加したら素直に解決しました。
こういう修正は、図面上のコネクタ輪郭だけで決めたときに起こりやすいです。

設計前に拾っておきたい項目は、箇条書きにすると次の並びが実務向きです。

  • 基板外形(X/Y/Z)と、基板下面・上面の最大突出部
  • コネクタ位置と高さ、差し込み方向、ポート周辺の逃がし
  • ケーブル曲げしろと、抜き差し時に指が入る空間
  • スイッチ穴、LED窓、リセット穴の位置と操作方向
  • 固定方法の候補(ボス、スペーサー、スナップ、ビス止め)
  • 配線経路と、ふた開閉時に引っ張られない取り回し
  • 放熱・通気が必要な部品の位置
  • 分解手順と、どの順で外せば中身にアクセスできるかを解説します。
  • 将来の拡張余地。追加基板、電池、センサー、表示部の想定

この段階で、スイッチ穴やLED窓を単なる「穴あけ」にしないのもコツです。
押しボタンスイッチは指先が斜めから入ることもあるので、穴の深さと面取りで押し心地が変わります。
LED窓も、外から見える位置に置いただけでは読めません。
ラベルやシルクの向き、窓の縁の影、卓上に置いたときの視線の角度まで見ると、状態表示の読みやすさが変わります。
矢印や「→」のような記号を入れるなら、コネクタの近くでもケーブルに隠れない位置へ逃がしておくと、完成後の使い勝手が落ちません。

クリアランスと公差の出発点

寸法設計は経験則だけで進めると外しやすいので、最初の目安を持っておくと安定します。
Protolabs Networkの3Dプリント筐体ガイドでは、ケースの最小肉厚は2 mm、内部部品とのクリアランスは0.5 mm、穴やかみ合わせ部の目安は±0.25 mmが出発点として整理されています。
筆者もこの数字をベースに置いて、最初の試作を作ることが多いです。
壁を2 mm未満に削り込みすぎると、ねじ周りや角の強度が落ちて割れやすくなりますし、内部クリアランスを詰めすぎると、造形誤差よりも先に組み付け誤差で止まります。

ただし、この数字は完成値ではなく、あくまで最初の一歩です。
FDMでは線形精度の目安が0.2%〜2%と幅があり、プリンター本体、材料、積層方向、冷却条件で結果が変わります。
そこで実務では、本番ケースをいきなり長時間出すより、穴、はめ合い、ポート開口だけを並べたテストピースを先に作り、自分の機械で校正します。
筆者はボス周り、USB開口、ふたの合わせ面を1枚の小片にまとめて出して、0.1 mm刻みでどこから渋くなるかを見ることが多いです。
このひと手間で、本体の再出力回数が減ります。

TIP

ポート周辺は、外形寸法だけでなくプラグ側の樹脂ブーツまで当てて確認すると、後戻りが減ります。
特にUSB Type‑CやMicro‑Bは、金属シェルより外側の樹脂が想像より張り出していることがあります。

クリアランスは場所ごとに意味が違います。
基板外周に入れる0.5 mmは「入るための余白」、ポート周辺の0.2〜0.3 mmは「干渉しないための逃がし」、リップ&グルーブの合わせ面に入れる±0.25 mmは「閉まるための公差」という具合です。
ここを全部同じ数値で処理すると、どこかがきつく、どこかが緩くなります。
たとえば基板受けの内側は0.5 mm見ていても、ポート穴の四隅は角が立っているとケーブルの樹脂に当たりやすいので、少し面取りして入口を広げたほうが実用上は通ります。
穴寸法そのものより、入口形状で解決する場面は多いです。

肉厚2 mmを基準にしつつ、内部の細い仕切りや配線ガイドだけは役割を分けて考えるとまとまります。
荷重を受ける外壁、ねじを受けるボス根元、ヒンジ周辺は2 mm以上を前提にして、ケーブルを押さえるだけの軽い仕切りは必要最小限に留めるほうが、造形時間と強度のバランスが取れます。
内部にリブを入れるなら、外壁を厚くするより反りを抑えつつ剛性を稼ぎやすい構成になります。
JLC3DPの電子筐体ガイドでも、筐体は壁厚だけでなく、補強の入れ方と配線経路をセットで考える流れが紹介されています。

固定方法と開閉・メンテ性の設計

固定構造は、ボス、リブ、合わせ面、開閉方法を一体で考えると破綻しにくくなります。
ボスは単にねじ穴を立てる柱ではなく、基板を載せる座面、ねじの芯を保持する軸、締結荷重を底面へ逃がす支柱の役目を持ちます。
座面径が狭すぎると基板が沈み、ボス高さが足りないとコネクタやはんだ面が底に当たります。
逆に高すぎると細長い柱になって、締めた瞬間にたわみます。
そこでボス単体で立てず、根元にリブを足して底面や側壁へつなぐと、締結時のぐらつきが減ります。
ねじを受ける場所ほど、点ではなく面と線で支える発想が効きます。

ふたの合わせには、リップ&グルーブを入れておくと位置決めが安定します。
片側に段差のあるリップ、反対側に受け溝のグルーブを作る形です。
これがあると、ねじを締める前からふた位置が決まり、光漏れや段差も抑えやすくなります。
ビス止めと組み合わせると、ねじは「引き寄せる役」、リップ&グルーブは「位置決めとズレ止め役」に分担できます。
最初の1個では、この分担がいちばん堅実です。

スナップフィットは魅力的ですが、最初から主固定に据えると難度が上がります。
筆者もツメ形状を攻めすぎて、組み立て1回目で折ったことがあります。
画面上では気持ちよく見えても、積層方向と樹脂の粘りが合わないと、開けた瞬間に白化してそのまま破断します。
その経験以降、初号機はビス止め+リップ&グルーブでまとめ、形状と寸法が固まってからスナップへ置き換える流れにしています。
この順番だと、不具合の原因を「寸法ミス」なのか「ツメの構造不足」なのか切り分けやすくなります。

開閉方法の選択も、使い方で変わります。
中身を頻繁に触るなら、ヒンジ付きのふたか、少数のビスで開く構造が向きます。
展示用や一体感を優先するならスナップも候補ですが、配線の引き回しと分解順序まで決めていないと、開いた瞬間にケーブルへ荷重がかかります。
ここで効くのが、配線を直はんだで閉じ込めず、なるべくコネクタ化しておく考え方です。
ふた側にLED基板やスイッチ基板を載せる場合でも、コネクタで切り離せるようにしておけば、分解時に半開きのまま無理な角度で保持しなくて済みます。

ネジ位置は四隅に置けばよい、というわけでもありません。
片側へ寄せると、締めたときにふたが斜めに引かれて、反対側が浮くことがあります。
基板上の重い部品、ケーブルの引き込み位置、壁の薄い部分を見ながら、荷重が偏らない位置へ振るほうが組み上がりが安定します。
M2やM3の小ねじを使う場合も、ねじ中心だけ合わせるのではなく、ドライバーが入る逃がし、指が持てる余白、ねじを落としても拾える空間まで見ておくと、実際の整備性が上がります。

ポート周辺は「穴を開ける」より「周辺を逃がす」で考えるほうがうまくいきます。
USB、電源、オーディオジャックの周辺は、四角い開口だけだとケーブルブーツが当たりやすいので、入口の面取りや周囲の肉抜きで逃がします。
ケーブルの最小曲げ半径も確保して、差した直後に急角度で折られない経路を作ると、見た目だけでなく断線防止にも効きます。
スイッチ穴やLED窓の近くにラベルを置くときも、コネクタを挿した状態で読める向きを意識すると、完成後の迷いが減ります。
ケースは閉じた瞬間が完成ではなく、開ける、挿す、見る、直すという一連の動作まで含めて設計すると、使っていて気持ちいい箱になります。

材料の選び方:PLA・PETG・ABS/ASA・ナイロンをどう使い分けるか

用途・設置環境での選定早見表

材料選びは、強度の好みより先に「どこで、何に使う箱か」を決めると迷いが減ります。
電子工作のケースは、室内の机上試作と、常設の実用品、屋外センサー箱では要求がまるで違います。
ここを曖昧にしたまま材料を選ぶと、CADで形ができても、STL/OBJへ書き出してスライサーで積層条件を詰めた段階で「この材料では前提が違った」となりがちです。
3D CADは寸法と構造を決める道具、STL/OBJはその形をプリンターへ渡す中間形式、スライサーは積層方向や壁数、充填率、サポートを決める工程という役割分担で見ておくと、材料選定の判断軸も整理できます。

用途ごとの目安を、まず表で置いておきます。

使用条件向く材料理由
室内の寸法確認、仮組み、初回試作PLA造形が安定しやすく、反りが少ないので寸法の当たりを取りやすい
室内で常設するケース、治具、軽い持ち運び用途PETG耐衝撃と耐熱のバランスがよく、実用品へそのまま進めやすい
熱源の近く、電源周り、車内に置く箱ABS/ASAPLAより熱に強く、実使用で形が崩れにくい
屋外に置くセンサー箱や露出部品のカバーASA耐候性があり、日光下での色あせや変形を抑えやすい
繰り返し開閉するヒンジ部、衝撃を受ける部品PETG / ナイロンPETGは粘りがあり、ナイロンはさらにタフで割れにくい
高い耐衝撃性が欲しい治具、可動部まわりナイロン強靭で、欠けや割れより先にたわんで逃がせる場面が多い
湿気の多い場所や乾燥管理が難しい運用PETG / ASAナイロンは吸湿の影響を受けやすく、保管前提が重くなる

筆者の感覚では、最初の材料としてはPLAかPETGの二択にしておくのがいちばん筋がいいです。
PLAはとにかく試作が前に進みますし、PETGはその試作を少し実用品側へ寄せた位置にあります。
逆にABS/ASAやナイロンは、材料そのものは魅力的でも、プリント条件や保管条件まで含めて管理項目が増えます。
初心者の最初の1個で詰まりやすいのは形状そのものより、材料と条件の組み合わせです。

ここで見落としやすいのが、ケースは樹脂だけで成立しないという点です。
ノギスで現物を測り、ネジ、スペーサー、コネクタの実寸を拾って、固定方法まで先に決めておく必要があります。
たとえばM2やM3のネジを使うなら、単なる穴ではなく、ヒートセットインサートを入れるのか、セルフタップ前提で樹脂に食い込ませるのかで、ボス径も肉厚も変わります。
繰り返し開閉するふたならヒートセット寄り、一度締めて固定するだけの箱ならセルフタップ寄り、という考え方で先に構造を決めておくと、材料選びがぐっと現実的になります。

TIP

室内試作の段階ではPLAで寸法と干渉を確かめ、常設や持ち運びに回す版だけPETGへ移す流れだと、失敗の切り分けがはっきりします。
寸法の問題と材料の問題を同時に追わずに済むからです。

各材料の特徴と注意点

PLAは、電子工作ケースの最初の一歩としてもっとも扱いやすい材料です。
反りが少なく、角の立った箱物でも形になりやすいので、基板受け、ポート穴、ふたの合わせ面といった基本構造の確認に向いています。
Protolabs Networkの3Dプリント筐体ガイドでも、壁厚や公差を踏まえてまず形を詰める流れが紹介されていますが、PLAはその「形を詰める」工程と相性がいいです。
筆者も最初の筐体は、だいたいPLAで1回通します。
ノギスで測った値どおりに3D CADへ入れ、STLに書き出し、スライサーで壁数と積層方向だけ整えて出すと、設計ミスが見えやすいからです。

ただしPLAは熱に弱いので、高温になる場所には向きません。
筆者は一度、室内常設なら問題ないだろうとPLAでセンサーケースを作り、夏場の窓際に置いていたら、ふたの合わせ面がわずかにたわみました。
閉まらないほどではなかったのですが、ネジ位置が微妙にずれて、開閉時の感触が悪くなりました。
それ以来、最終品が窓際や電源まわりに置かれるならPLAのまま終わらせず、PETGへ切り替えるようにしています。

PETGは、電子工作ケースでいちばんバランスがいい材料です。
PLAより熱に強く、衝撃にも粘りで耐えるので、卓上ケース、簡単な治具、持ち運ぶ小型ケースまで守備範囲が広いです。
PLAほど気軽ではないものの、ABSほど神経を使わず、実用品へつなぎやすい立ち位置です。
筆者が「迷ったらPETG」と言うのはこのためで、室内常設、軽い衝撃、多少の温度変化まで一枚で受け持てます。
先ほどの窓際ケースも、最終版をPETGで刷り直してからは、合わせ面の安定感が明らかに増しました。
ケースや固定治具を作る人が最初に覚えるべき実用品向け材料として、PETGは本命です。

ABSとASAは、実用品としての適性が高い材料です。
熱に強く、電源周りややや高温になる場所でも形を保ちやすいので、屋内設備のケースや熱のこもる機器まわりに向きます。
ただし反りやすく、角のある箱をそのまま出すと端が持ち上がりやすいので、エンクロージャーと換気のある運用が前提になります。
ここはアルテックの3Dプリンター方式解説でも、FDM材料ごとの扱いの難しさとして触れられている部分です。
ABS系は材料自体が悪いのではなく、プリント環境まで設計に含める必要があります。

屋外ならABSよりASAを優先したくなります。
ASAは耐候性の面で一段有利で、日差しにさらされる箱で差が出ます。
筆者も屋外の露出センサー用ケースを作ったとき、最初はPETGでもいけるかと思いましたが、長く置く前提ならASAのほうが安心感がありました。
実際、ASAにしてからは色あせも目立ちにくく、箱の反りも抑えられました。
屋外設置で「形は合っているのに見た目が早くくたびれる」という失敗を避ける材料として、ASAは素直に強いです。

ナイロンは、強さだけを見るととても魅力があります。
衝撃を受ける治具、頻繁に着脱する部品、少したわんで逃がしたい構造では頼もしい材料です。
ヒンジ部や、繰り返し触るパーツにも向きます。
ただし吸湿しやすいので、保管とプリント前乾燥まで含めて扱う材料です。
糸引きや表面荒れだけでなく、寸法の再現性にも影響が出るため、「強いから万能」とは言えません。
ケース本体より、繰り返し力がかかる限定的な部品に使うほうが、ナイロンの良さが出ます。

材料ごとに、固定方法との相性も見ておきたいところです。
PLAはセルフタップでも使えますが、何度も開け閉めするならヒートセットのほうが安心です。
PETGも同様で、ふたを定期的に外す構造ならヒートセットを前提にボスを設計したほうが再現性が出ます。
ABS/ASAはヒートセットとの相性がよく、実用品のケースでは相性のいい組み合わせです。
ナイロンは粘りがあるぶん、セルフタップ側で設計することもありますが、締め込み感のばらつきを抑えたいならやはりインサートが有利です。
つまり材料選定は、樹脂単体ではなく「ネジとボスをどう成立させるか」まで含めて考える必要があります。

迷ったときの二段アプローチ

材料選定で止まったときは、フローチャートのように単純化すると前へ進めます。
筆者は次の順番で考えています。
まず室内の寸法確認や操作感の確認が主目的ならPLAです。
次に、そのまま常設する、持ち運ぶ、少し熱を持つ場所へ置くならPETGへ上げます。
さらに熱源の近くや屋外へ出るならABS/ASAを候補にし、屋外露出があるならASAを優先します。
衝撃や繰り返し変形に耐えたい特殊部位だけ、ナイロンを検討します。

この流れをもう少し短く言うと、「まずはPLAで寸法確認、迷ったらPETG」です。
二段に分ける理由は、失敗の原因を分離できるからです。
たとえばポート位置が合わない、スペーサー高さが足りない、ネジ頭の逃がしが浅い、といった問題は材料を変えても解決しません。
こういう設計ミスはPLAで十分あぶり出せます。
そのうえで、熱、衝撃、屋外耐性の要件だけをPETGやASAへ引き上げると、修正の意味が明確になります。

ここで効いてくるのが、前段の設計情報をきちんと持っていることです。
ノギスで基板、コネクタ、ケーブル根元、ネジ頭、スペーサー長を測り、3D CADでボス径と座面を決め、STL/OBJへ出して、スライサーで積層方向を固定方法に合わせる。
この一連の流れができていれば、材料変更は「同じ設計を別の性格の樹脂で出す」作業になります。
逆に採寸が曖昧なままだと、材料を変えるたびに別の箱になってしまいます。

初号機の考え方としては、PLAでケース外形と内部干渉を確認し、固定方法はM2またはM3のネジとスペーサー前提で堅めに作るのが無難です。
繰り返し開閉するならヒートセットを見込み、たまにしか開けない箱ならセルフタップ前提でボスを作る。
この段階でうまく閉まり、基板が浮かず、コネクタが無理なく挿さることを確認できたら、最終材料をPETGかASAへ移す。
筆者はこの順番にしてから、1個目で大崩れする頻度がぐっと減りました。
材料選びを「好きな樹脂を当てる作業」ではなく、「用途に応じて役割を切り替える作業」として扱うと、ケース作り全体が安定します。

熱・反り・冷却・防水防塵で失敗しないための注意点

冷却とレイヤー時間の設計

FDMのケース造形で見落とされやすいのが、材料そのものより先に「冷える時間」を設計することです。
箱の大きな面はそれなりに安定して積めても、小さなツメ、薄い柱、角の立った開口まわり、USBポートの逃がし形状のような細部は、前の層がまだ柔らかいうちに次の層が載ると一気に崩れます。
とくに電子工作ケースは、ふたのツメやコネクタ窓の四隅など、小物形状が局所的に集まりやすいので、冷却不足がそのまま「はまらないケース」につながります。

ここ間違えやすいんですが、ファンを強く回せば全部解決するわけではありません。
FDMではパーツ冷却ファンの風量と、スライサー側の最小レイヤー時間をセットで考える必要があります。
最小レイヤー時間は、1層を積み終えるまでが短すぎるときに速度を落として冷却時間を稼ぐための考え方で、小さなボスやツメでは効き目が大きいです。
筆者も小型のツメ部品を単体で刷ったとき、レイヤー時間が短すぎて先端の角がだれて丸まり、ふたがロックしない形になったことがあります。
そのときは温度だけでなく、同じ部品を複数個並べて同時印刷に変えたところ、ヘッドが別個体へ移動する間に各パーツの冷却時間が取れて、角の立ち方が安定しました。
設定を詰める前に造形物の並べ方で解決できる場面は、実務では意外と多いです。

外部から扇風機のように風を当てる方法は、応急処置として効く場面もありますが、常用の前提にはしにくいです。
風が一方向から当たると、片側だけ縮み方が変わって、箱物では寸法の偏りや層間の弱りにつながります。
ブリッジ部の垂れを一時的に抑える用途ならまだしも、ケース全体を安定させる手段としては、まずプリンターのパーツ冷却ファン設定、温度、速度、最小レイヤー時間を整えるほうが筋が通っています。
キヤノンの3Dプリンター基礎解説でも、積層造形は材料を重ねるだけでなく、各層の固化条件が仕上がりを左右する前提で整理されています。
ケース用途ではこの前提をそのまま受け止めたほうが失敗が減ります。

ブリッジや開口部の上端も、冷却設計の影響が出やすい場所です。
たとえばRaspberry Pi PicoのMicro‑B開口や、Arduino Uno Rev3のUSB Type‑Bまわりでは、ポート窓の上側が短い橋渡しになります。
ここで冷却が足りないと、天井がわずかに垂れてコネクタ外装に触れ、見た目は通りそうでも抜き差しで引っかかります。
ポート穴そのものの寸法だけでなく、上辺のブリッジ長さ、面取り、積層方向まで合わせて見るのがコツです。
薄い穴縁を空中に作るより、向きを変えて段差として積んだほうが素直に出ることもあります。

反り・収縮とその対策

反りは、箱物ケースで最初に形を壊すトラブルです。
底面の四隅が持ち上がると、ふたとの合わせ面がねじれ、基板を固定してもポート位置が合わなくなります。
ABSやASAで起きやすい現象ですが、PLAやPETGでも広い底面では無関係ではありません。
原因は冷えて縮む力が面内で引っ張り合うことで、ベッド密着がその力に負けると端から浮きます。

対策の出発点は、ベッドにしっかり密着させることです。
ブリムは、ケース外周の接地面を増やして角の浮きを抑える基本手段です。
ラフトはさらに土台を一枚入れる考え方で、反りの強い材料では有効ですが、底面の仕上がりは犠牲になります。
電子工作ケースだと、底面がそのまま机に触れたり、内部に基板スペーサーが立ったりするので、筆者はまずブリムで粘って、どうしても厳しいときだけラフトへ進むことが多いです。

ABS/ASAでは、エンクロージャーの考え方も外せません。
ここで言うエンクロージャーは防水箱の意味ではなく、プリンターまわりを囲って温度変化と気流を減らすための箱です。
反りや層割れは、材料が急に冷えることで起こるので、造形空間を安定させるだけで結果が変わります。
前のセクションで触れた通り、ABS/ASAは材料だけ選んでも成立せず、プリント環境まで含めて1セットです。
角のある大きめケースをABSでそのまま出してうまくいかないとき、設計ミスに見えて実際は環境由来という場面を、筆者もFab施設で何度も見てきました。

形状側の工夫も効きます。
直角で肉が急に集まる角は応力が集中しやすく、反りの起点になります。
底面外周に小さな面取りを入れる、外角と内角にRをつける、広い平面を少し分割する、といった処理だけでも、縮む力の偏りが減ります。
電子工作ケースは見た目を四角く保ちたくなりますが、CAD上でわずかに丸めたほうが、完成品はむしろきれいに閉まります。
Protolabs Networkの筐体設計ガイドでも、最小肉厚の確保だけでなく、角やボス周辺の応力集中を避ける方向で設計を組む考え方が紹介されています。
箱の見た目を優先してシャープに描きすぎると、FDMではそのまま弱点になります。

NOTE

反り対策は、材料変更より「接地面を増やす」「急冷を避ける」「角の応力を逃がす」の3点で整理すると迷いません。
ABS/ASAで崩れる箱をPETGに変える前に、この3つを詰めると原因が切り分けやすくなります。

収縮まで含めて考えると、合わせ面の設計にも余裕が要ります。
上下ケースのかみ合わせをぴったりゼロ隙間にすると、少しの反りでも途中で当たって閉まりません。
ふたのリップと本体の溝を使う構造でも、案内面に逃げを持たせて、当たり始める場所を限定したほうが組み付けで暴れません。
筆者は角の4点で締め込むより、リップ全周で位置を出してからネジで押さえる構成にすると、反りの影響を吸収しやすいと感じています。
ケースは見た目の箱ではなく、縮む樹脂をどう着地させるかの設計だと考えると整理しやすくなります。

IP等級とガスケット/ケーブルグランド

電子工作ケースを屋外や粉じん環境へ持ち出すときは、通気と保護を両立させる視点が必要です。
放熱のためにスリットやパンチ穴を増やせば、自然対流は確保しやすくなります。
その代わり、ほこりや水滴の侵入口も増えます。
ここはトレードオフがはっきりしていて、熱対策だけ、防塵だけを単独で最適化すると失敗します。
発熱するレギュレータやDC-DC周辺を逃がしたいなら、上面と下面に抜ける流れを作る一方で、メッシュやフィルターを挟んで粒子を直接入れない構造にする、といった組み合わせが現実的です。
吸気口を真上に向けず、庇のような壁や迷路形状を入れるだけでも、飛沫や砂ぼこりの直進を抑えられます。

防水防塵を考えるときの基準になるのがIP等級です。
Forge LabsのIP設計解説が整理している通り、ケースでは「必要な等級を先に決める」「その等級を満たす構造を設計する」「試験で確かめる」の順で進めるのが基本です。
IPコードはIEC 60529で定義されていて、第1特性数字が固形物や粉じん、第2特性数字が水に対する保護を表します。
たとえば6は完全防塵、4はあらゆる方向からの飛沫、7は一定条件での水没耐性という読み方です。
ここを曖昧にしたまま「防水っぽい箱」を作ると、散水には耐えても浸水で負ける、粉じんは止めてもケーブル出口から水が入る、といったズレが起きます。

FDM単体で高い防水を狙うのが難しい理由は、積層痕と合わせ面があるからです。
壁を厚くしても、合わせ面、ネジ穴、ケーブルの引き出し口が無防備だと、そこが侵入口になります。
つまり、防水は「樹脂を出力したら終わり」ではなく、シール部品を前提に組む必要があります。
実務で効くのは、ふたと本体の合わせ面をリップ&グルーブ形状にして、その溝へガスケットや発泡シール材を噛ませる方法です。
平面同士を押し付けるだけより位置決めが安定し、圧縮方向も作れます。
ネジ部にはシールワッシャを併用すると、締結点からの水の回り込みを抑えられます。
Oリング溝を切る方法もありますが、断面形状と圧縮のさせ方まで設計に含めないと、ただの飾り溝になりがちです。

ケーブル出口は、とくに見落としやすい場所です。
ふたの合わせ面を丁寧に作っても、線をそのまま切り欠きから出せば、そこが一番大きな穴になります。
そこで効くのがケーブルグランドです。
ケーブル外周を弾性体で締めて外装へ固定する部品で、引っ張り止めとシールを兼ねられます。
筆者は屋外に置くセンサー試作で、最初はケース側の切り欠きだけで通していたのですが、雨上がりに内部へ水が回り込んで失敗しました。
そこでケーブルグランドを追加し、合わせ面にもシール材を入れたところ、浸水が止まりました。
試作としては十分成立した一方、量産や長期設置まで考えると自作ケース単体でIPを担保し続けるのは骨が折れるので、最終品は市販のIPボックスへ移しています。
この切り替えも現場ではよくある判断です。

一方で、密閉すれば何でも解決するわけではありません。
温度差で内部に結露が出る構成では、水を外から防いでも内側で困ります。
そこで、下向きで水がたまりにくい位置にドレンホールを設ける考え方もあります。
これは水を入れない設計と矛盾するように見えますが、使用条件によっては「入った水を抜く」「結露を逃がす」ほうが故障を減らします。
どの程度まで密閉するかは、必要なIP等級と発熱、結露リスク、メンテナンス頻度を並べて決めるほうが筋が通ります。

放熱穴、防塵メッシュ、ガスケット、ケーブルグランド、ドレンホールは、それぞれ単品で語るよりも、ケース全体の役割分担として考えると破綻しません。
防塵寄りなら吸排気を絞ってフィルター前提、放熱寄りなら空気の通り道を優先して基板側にダスト対策を入れる、防水寄りなら通気を諦めて熱源を分離する、といった設計判断になります。
電子工作ケースは、単に部品が入る箱ではなく、熱・粉じん・水・配線の通り道を全部まとめて受け止める外装です。
この視点が入ると、造形条件と機械設計のつながりが見えやすくなります。

初心者向けの進め方:最初の1個を作る手順

Step 1〜3:採寸とラフ設計

最初の1個は、いきなりCADを開くより、机の上に入れたい部品を全部並べるところから始めると流れが安定します。
基板、本体ケースに出したいUSBコネクタ、スイッチ、LED、固定に使うネジ、必要ならスペーサやワッシャまで一度並べて、「どの面に何が出るか」を先に決めます。
ここで正面と側面の役割を決めておくと、後でポート位置が迷子になりません。
筆者はこの段階で、ケーブルを実際に挿した状態も横に置きます。
コネクタ単体の寸法だけ見ていると、ケーブル根元のふくらみで失敗するからです。

採寸はデジタルノギスで、外形、取り付け穴、基板の高さ、コネクタ位置を順に拾います。
一般的なデジタルノギスは最小読取値0.01 mmの製品が多く、測る道具として十分頼れますが、ケース設計では測定値をそのままぴったり写すのではなく、前述のクリアランス込みで考えるのがコツです。
Protolabs Networkの筐体設計ガイドでも、最小肉厚2 mmや内部部品まわり0.5 mmの余裕が出発点として整理されています。
電子工作ケースは「寸法を写す作業」ではなく、「入る・締まる・挿さる形に変換する作業」だと捉えると、手が止まりません。

紙の2Dラフは、思っている以上に効きます。
正面図と側面図を描いて、基板の位置、USBやDCジャックの穴、ネジ位置、ふたの分割ラインを書き込みます。
この段階では見た目を整えるより、穴同士が干渉していないか、内部の高さが足りるかを見るのが先です。
『JLC3DPの電子筐体ガイド』も、材料選定や配線の通り道を早い段階で決める流れを勧めていますが、実際にやってみると紙ラフの時点で詰まりが見えることが多いです。
ここ間違えやすいんですが、最初から完璧な外観を描こうとすると進みません。
まずは四角い箱でもよくて、入ることと配線が通ることを優先したほうが一歩先へ進めます。

材料もこのタイミングで仮決めしておくと、肉厚や反りの前提が定まります。
最初の1個ならPLAかPETGで十分です。
室内で使う試作ならPLA、ねじ止めや日常使用まで見込むならPETGのほうが粘りがあって扱いやすい場面が多いです。
屋外設置や熱源の近くへ置く箱だけは、前述の通りABSやASAまで含めて考えます。
ここで材料まで確定しなくても、少なくとも「まずPLAで形を見る」「本命はPETGにする」といった段取りは決めておくと、試作の意味がぶれません。

jlc3dp.com

Step 4〜6:CADとテストピース

CADに入ったら、最初は簡易モデリングに徹します。
箱の外形を作り、肉厚を持たせ、基板の逃がしとコネクタ窓だけ入れる。
この時点で細かいRやロゴ、テクスチャは後回しです。
筆者は初心者向けのワークショップでも「最初のモデルは箱、穴、ボスだけで勝負」とよく伝えます。
要素を増やすほど、失敗したときの切り分けができなくなるからです。
FDMの線形精度目安は0.2%〜2%なので、画面上でぴったりでも、出力物はそのまま一致しません。
だからこそ、いきなり完成品を出すより、小さなテストピースで自分のプリンターの癖を掴む流れが効きます。

テストピースは、ケース全体を縮小した模型ではなく、ネジ穴・はめ合い・コネクタ窓の3要素だけに絞ると学びが濃くなります。
たとえば側面パネルの一部だけを切り出して、USBの開口、ふたのかみ合わせ、M3の通し穴やボス周辺だけを載せた小片を作るイメージです。
穴やかみ合わせ部は±0.25 mm、ポート周辺は0.2〜0.3 mmを出発点にすると調整の方向が見えます。
筆者はUSB-Cの窓位置を詰めるとき、コネクタ周辺だけをL字に切り出したテストピースを先に2回出しました。
正面の幅だけでなく、側面から見た高さ方向の当たりも同時に見たかったからです。
このL字型にしておくと、正面と側面を一度に検証できて、本番ケースでは穴位置がほぼ一発で決まりました。
全面を毎回刷るより、造形時間もフィラメントも節約できます。

出力設定の初期値も、まずは固定しておくと比較がしやすくなります。最初の基準としては次のような組み合わせで十分です。

  • 層厚0.2 mm
  • 外周3
  • インフィル20%
  • ブリム有り

ここから、角が反るならブリムを増やす、ネジ座面が弱いなら外周や局所肉厚を増やす、天面のたわみが気になるならインフィルよりも上下面や外周を見直す、という順で触ると原因が追えます。
設定を一度に何個も変えると、どれが効いたのか分からなくなります。
実はここ、めっちゃ大事なポイントで、試作前提の設計は「失敗を減らす」のではなく「失敗の意味を読めるようにする」作業です。
最初から完璧を狙わないほうが、結果として完成まで短くなります。

NOTE

テストピースで見るべき場所を3つに絞ると、穴がきついのか、窓位置がずれているのか、かみ合わせが渋いのかを切り分けられます。
ケース全体を刷ってから全部同時に直すより、修正量が素直に見えてきます。

Step 7〜8:本番出力とフィッティング

テストピースで基準が見えたら、本番出力へ進みます。
ここでも「これで完成」と構えすぎず、一次試作のつもりで進めると気持ちが楽です。
本番ケースは造形後すぐに組まず、まず基板だけ、次にケーブルだけ、次にネジだけという順で合わせると、どこが当たっているか読み取りやすくなります。
コネクタ窓が少し狭い、取り付け穴が渋い、といったズレはこの段階で普通に出ます。
FDMではむしろ、その前提で進めたほうが自然です。

穴調整は手工具での微修正まで含めて工程に入れておくと安定します。
通し穴やボス穴は、ハンドリーマーやドリルで0.2〜0.5 mmだけさらうと一気に収まりが整います。
ここで削りすぎないよう、少し当てて基板を合わせ、また少し削るの繰り返しが基本です。
USBや電源ケーブルが通る窓の縁には軽く面取りを入れておくと、被覆が擦れにくくなります。
ケーブル保護の意味でも、このひと手間は効きます。

ネジまわりは、初回で失敗しやすい場所です。
筆者も一度、ネジ座面を薄く作りすぎて、締めた瞬間に座面が沈んだことがあります。
そのときは座面厚みを2 mmから3 mmへ増やし、ワッシャも併用して面で荷重を受けるように変えたら落ち着きました。
点で押さえる構造だと、造形方向によっては樹脂が局所的に負けます。
少し厚くして、荷重を広く逃がすだけで、締結部の雰囲気が変わります。
見た目は地味でも、実用品のケースではこういう修正が効きます。

組み付けでは、基板固定、ふた合わせ、ケーブル挿入の順に進めると無理が出ません。
先にふたを閉めてからケーブルを押し込むと、窓位置のズレやブーツ干渉に気づきにくいからです。
基板が収まり、穴を少し調整し、ケーブルが無理なく入るところまで来れば、そのケースはもう十分に前進しています。
1個目は完成品というより、自分のプリンターでどのくらい縮み、どのくらい穴が詰まり、どのくらい余裕を見れば気持ちよく組めるかを覚える教材でもあります。
この感覚が一度つかめると、2個目からは設計が急に現実的になります。

よくある失敗と対策

寸法・干渉のトラブル

ケース製作で最初につまずきやすいのは、外形は合っているのに実物が収まらないパターンです。
典型例が、基板が入らない、フタが閉まらない、USBコネクタが干渉する、の3つです。
FDMの線形精度には誤差があるので、CAD上でぴったり合わせる発想だと詰まりやすく、内部には少なくとも0.5 mmの余裕を見たほうが収まりが安定します。
Protolabs Networkの設計目安でも内部部品のクリアランスは0.5 mm、穴やかみ合わせ部は±0.25 mmが出発点とされていて、この数字を基準にすると修正量の見当がつきます。

基板が入らない原因は、たいてい内寸不足か、角やリブの逃がし不足です。
矩形の基板でも、実物にははんだの盛り上がり、ピンヘッダの根元、基板端の面取り不足があって、図面通りの四角にはなっていません。
筆者はRaspberry Pi Picoや小型センサ基板のケースを作るとき、最初から角に小さな逃げを入れ、入口にも軽い面取りを付けます。
これだけで「最後の1 mmが入らない」が減ります。
初回はケース全体を刷るより、基板が当たりそうな底面周辺だけを切り出したテストピースのほうが、どこを削るべきかはっきり見えます。

フタが閉まらないときは、上下ケースのかみ合わせ寸法だけでなく、内部の配線や部品高さも疑うべきです。
かみ合わせの余裕は±0.25 mmを再確認しつつ、フタ側の裏面に当たる部品がないかを見ます。
意外と多いのが、基板本体ではなく、ジャンパワイヤのループやはんだの山がフタを押し上げているケースです。
造形物が反っていると、寸法が合っていても周辺から浮いて閉まりません。
こういう反りはブリム追加やエンクロージャーで抑えたほうが早く、設計修正だけで追い込もうとすると遠回りになります。

USBコネクタの干渉も、寸法トラブルの定番です。
開口部はコネクタ金属シェルだけでなく、ケーブル根元のブーツまで含めて考えないと、穴の位置が合っていても挿し込みで止まります。
ポート周辺は0.2〜0.3 mmの追加余裕を出発点にし、入口に面取りを入れると当たりが一気に減ります。
筆者の経験では、USBポートのズレは図面合わせより、使うケーブルを実際に差した状態で現物合わせしたほうが早いです。
特にUSB Type‑Cはポート自体の開口が約8.4 mm×2.6 mmでも、実際に当たるのはケーブル側の樹脂ブーツです。
USB‑IFの規格情報がまとまっているusb.org(https://www.usb.orgを見るとポート規格の考え方は追えますが、最終的なケース窓は実物ケーブルを差しながら詰めたほうが外しませんでした)。

TIP

干渉確認は「基板単体」「フタ単体」「ケーブル差し込み」の順で分けると、内寸不足なのか、かみ合わせ不足なのか、開口形状の問題なのかを切り分けやすくなります。

固定・ネジ周りのトラブル

ネジ周りは、完成直前で割れて気持ちが折れやすい場所です。
よくあるのが、ネジ穴が割れる、締めると座面が沈む、何度か開閉したらねじ山が効かなくなる、という失敗です。
原因はだいたい、下穴が小さすぎるか、座面やボスの肉が足りないかのどちらかです。
ケース設計では最小肉厚2 mmが目安ですが、ネジ座面のように荷重が集中する場所は3 mm以上あると落ち着きます。
プラスチック用セルフタップは食いつきが強いぶん、下穴が攻めすぎだとボスを内側から押し広げて割ります。

特にM2はボスが細くなりやすく、見た目以上に割れやすいです。
筆者もM2ビスのセルフタップで止める前提のケースを作ったとき、試作では通っても、組み立て回数が増えるとボスの根元に縦割れが出ました。
そこで、セルフタップ前提の設計をやめて、ヒートインサート+貫通穴に切り替えました。
フタ側はインサート、反対側は通し穴にして、必要に応じてナットでも受けられる構成にすると、締結の再現性が揃いやすく、複数個作るときの歩留まりも上がりました。
量産と呼ぶほど大げさな数ではなくても、同じものを何個か作る段階ではこの差が効きます。

セルフタップを使う場合は、呼び径だけで穴を決めず、使うネジの食い込み方に合わせて下穴を調整したほうが安全です。
M2なら呼び径2 mm、M3なら呼び径3 mmですが、3Dプリント品では積層方向や穴のつぶれもあるので、最初から本番形状に突っ込むと失敗が読みにくくなります。
入口に軽い面取りを付けるだけでも、食い付き始めの欠けが減ります。
割れが続くときは、ネジを変えるより構造を変えたほうが早く、ヒートインサートや貫通+ナット固定へ寄せたほうが安定します。
MonotaROなどで見かけるヒートインサート用こて先のように専用工具もありますが、設計側でボス周辺の肉厚を確保しておかないと保持力は出ません。

もうひとつ見落としやすいのが、配線を直はんだしたせいで分解しにくくなる問題です。
ケースを開けたらフタに配線が引っ張られて、点検や修理が面倒になる構成は、完成直後は動いても後から困ります。
筆者は試作段階でつい直はんだに逃げることがありますが、そのままケース化すると、フタだけ外したい場面で作業性が一気に落ちます。
コネクタ化しておく、導線に少し余長を持たせる、フタを外した方向に引き抜ける取り回しにする、といった対策を入れると、メンテナンス性が別物になります。
ネジの強度だけでなく、開けたあとにどう扱うかまで含めて固定方法を決めると、実用品としての完成度が上がります。

熱・冷却のトラブル

PLAがたわむのは材料と放熱設計の問題で、印刷中に形が崩れるのはレイヤー時間とファンの問題です。
同じ「熱トラブル」でも手を入れる場所が違うので、ここを混同しないだけで修正が速くなります。
筆者も最初のころは、使用中に変形したケースを見て造形温度ばかり触っていましたが、実際には材料選定と通気のほうが効きました。
こういう切り分けができると、ケースづくりがだいぶ前に進みます。
(出典例: nature3d.net)

熱対策は材料変更だけでは足りず、通気と遮熱も効きます。
レギュレータやDC-DCコンバータの上にフタ裏がぴったり来る形は、熱だまりを自分で作っているのと同じです。
通気孔を入れる、熱源の上だけ天井を少し持ち上げる、日射を受ける場所なら暗色を避ける、といった設計のほうが、材料変更より先に効くこともあります。
見た目優先で全面を閉じると、ケースとしてはきれいでも熱の逃げ道がなくなります。

造形中のトラブルとして多いのは、冷却不足で形が崩れることです。
小さなボス、USB窓の角、細いリブの先端などは、前の層が冷える前に次の層を重ねると、角が丸まったり、穴がつぶれたりします。
こういう崩れはCADのせいに見えますが、実際は出力条件の問題であることが多いです。
レイヤー時間を確保し、パーツ冷却ファンの出力を調整し、1個だけ刷ると熱が回りすぎる形なら複数個同時に並べてノズルの待ち時間を稼ぐと、形が締まります。
ケースの角が妙にだれる、ボスの頂部が溶けたように見える、といった症状はこの手の冷却不足が疑いどころです。

使用時の熱と造形時の冷却を分けて考えると、対策も整理できます。
PLAがたわむのは材料と放熱設計の問題で、印刷中に形が崩れるのはレイヤー時間とファンの問題です。
同じ「熱トラブル」でも手を入れる場所が違うので、ここを混同しないだけで修正が速くなります。
筆者も最初のころは、使用中に変形したケースを見て造形温度ばかり触っていましたが、実際には材料選定と通気のほうが効きました。
こういう切り分けができると、ケースづくりがだいぶ前に進みます。

参考データと出典のまとめ

数値目安の早見表

ケース設計で最初に置く数字は、細かく見えても全体の歩留まりを左右します。
Protolabs Networkが示しているFDM向けの出発点を基準にすると、壁の最小肉厚は2 mm、内部部品まわりのクリアランスは0.5 mm、穴やかみ合わせ部は±0.25 mmで見積もると設計が組み立てやすくなります。
前のセクションで触れた肉厚2 mmも、この「まずここから始める」ときの基準値として扱うと収まりがよく、薄肉化で無理をしすぎる失敗を避けやすくなります。

既製ケース流用の基準としては、ELMが扱うSK-5透明プラケースの70×90×23 mmという外形がひとつの物差しになります。
価格も10個800円で1個あたり約100円相当なので、3Dプリントでゼロから箱を起こすべきか、まず既製ケースで収まりを確認すべきかを考えるときの比較軸になります。
特にRaspberry Pi Picoのような小型基板では、ケースそのものを作る前に、このサイズ帯に収まるかを当ててみるだけでも判断が速くなります。

数字だけ拾えるように整理すると、出発点は次の表に集約できます。

項目出発点の数値文脈
最小肉厚2 mm外壁・基本構造の初期値
内部クリアランス0.5 mm基板、配線、内蔵部品まわり
穴・かみ合わせ部のクリアランス±0.25 mmフタのはめ合い、差し込み穴、嵌合部
428SK-5のサイズ
SK-5の参考価格約100円/個(執筆時点の参考価格、流通で変動)10個800円換算の参考価格
防水防塵まで視野に入れる場合は、ケース形状だけでなく接合部の考え方が変わります。Forge Labsが解説している通り、IP等級は単に「隙間を狭くする」話ではなく、どの水の入り方を想定するかで設計の中身が変わります。たとえば飛沫を前提にしたいのか、水没まで含めたいのかで、合わせ面の段差、ねじ止め圧、ケーブル取り出し部の処理は別物になります。ここではガスケットやパッキンが前提に入り、フタと本体の平面精度だけに頼った密閉は成立しません。

TIP

数字を先に決めるときは、肉厚、内部クリアランス、嵌合クリアランス、既製ケース寸法の4つを同じ紙に並べて見ると、設計の優先順位が崩れません。
壁だけ厚くしても、配線の逃げやコネクタ根元で詰まるケースが多いからです。

目安と実機差の扱い方

ここでの数値は便利ですが、あくまで出発点です。
FDMでは、ノズル径、材料、温度、冷却、押出量、ベッド面の状態、そしてプリンター自体のキャリブレーションで結果が変わります。
FFF Best Practices系の資料でも、FFF方式の線形精度は0.2%〜2%の幅で語られていて、CAD上で同じ寸法にしても、出来上がりが同じ顔つきになるとは限りません。
だから実務では、設計値そのものより「自分の機体でその値がどう出るか」のほうが効きます。

筆者もここは何度もやらかしています。
穴やかみ合わせ部は±0.25 mmを起点に置いて設計したのですが、自分のFDM機では想定よりきつめに出る傾向があり、フタのはめ合いもコネクタ穴も少し攻めた印象になりました。
そこでテストピースを何回か切り直していくと、最終的には+0.3 mmまで広げたところで安定しました。
机上では0.05 mmの差でも、実物では「入る」「削らないと入らない」の境目になるので、この調整幅は見た目以上に効きます。

この感覚は、既製ケースと自作ケースのどちらを選ぶときにも役立ちます。
たとえばSK-5のような既製ケースは、箱そのものの寸法と価格が明快なので、まず部品が入るかを確認する用途に向いています。
一方で、USB開口、スイッチ逃がし、基板ボス、ガスケット溝まで含めて整えたいなら、3Dプリント側で自機の癖を踏まえた補正値を持っているほうが強いです。
数値を丸暗記するより、自分のプリンターでは「嵌合は何mm増しで落ち着くか」「円穴は何mm小さく出るか」を1セット持っておくほうが、次のケースでもそのまま効きます。

IP等級まわりも同じで、規格の名前だけ追ってもケースは閉まりません。
IEC 60529ベースのIPコード設計では、粉じんと水の侵入に対する保護を等級で整理できますが、実際の造形品では合わせ面の平滑さ、ねじ締結の均一さ、ガスケットの圧縮量が結果に直結します。
つまり、防滴を狙うケースと、単に見た目をきれいに閉じるケースは、似た形でも設計思想が違います。
ここを曖昧にすると、形は箱なのに密閉構造としては成立しない、という状態になりがちです。

数字を扱うときの実践的な順番は、まず既知の目安でCADを起こし、次に小さなテストピースで嵌合と穴径だけ先に切り出し、その結果を自分の基準値として固定する流れです。
こうしておくと、以後の設計で毎回ゼロから迷わずに済みます。
電子工作のケースづくりは寸法の暗記勝負ではなく、目安を自機基準へ翻訳する作業だと捉えると、失敗の回数が目に見えて減ります。

次のステップと学習リソース

今すぐやる1歩

次に手を動かすなら、まずは自分のケース用に“はめ合い・穴・ボス”を1枚にまとめたテストピースを出力してみてください。
フタの勘合、USB開口、ねじボスの3つを小さな板に集約しておくと、ケース全体を何度も刷り直す遠回りを避けられます。
ここ間違えやすいんですが、本番ケースをいきなり出すより、この1枚で自機の癖を先に掴んだほうが修正の速度が上がります。

筆者は最初の1台を、寸法確認用はPLA、本番はPETGという二段構えで進めることが多いです。
PLAは形の確認を素早く回せるので、開口位置やボスの当たりを短時間で見直せます。
そのあと同じ形をPETGで出すと、最終用途に寄せた確認まで一気に持っていけるので、結果として総作業時間が縮みました。
材料を最初から一本化するより、確認工程と完成品の役割を分けたほうが迷いが減ります。

もし対象がRaspberry Pi Picoなら、基板外形は51 mm × 21 mmです。
ケース内寸を考えるときは基板だけでなく、USB Micro‑B ケーブルの差し込み方向まで含めて見てください。Arduino Uno Rev3なら68.6 mm × 53.4 mmと一回り大きいので、同じ感覚で箱を縮めるとポートまわりで詰まりやすくなります。
部品の外形を先に紙へ書き出してからテストピースの寸法に落とすと、採寸とCADがつながります。

NOTE

テストピースには、予定しているネジ方式も入れておくと後工程が安定します。
M3のセルフタップで行くのか、ヒートインサートを使うのかで、ボスの外径や穴の考え方が変わるからです。

設計を育てるコツ

ケース設計を単発で終わらせないなら、CADをパラメトリック設計にしておくと後が楽です。
外形、板厚、フタのかぶり、ボス位置、コネクタ開口の余白を変数にして、CAD内のスプレッドシートから参照する形にしておくと、基板変更や寸法修正に追従できます。
たとえば板厚を変えたのにフタの段差だけ手で直す、という事故が減ります。
高専ロボコンの治具づくりでもそうでしたが、数字を1か所で持つ設計は、修正回数が増えるほど効いてきます。

特に電子工作ケースは、途中で「やっぱり基板をRaspberry Pi PicoからArduino Uno Rev3へ変えたい」「USB Micro‑B から USB Type‑C にしたい」が起こります。
USB Type‑Cのポート外形は代表値で約 8.4 mm × 2.6 mmなので、開口設計の基準も変わります。
ここをスケッチに直書きしていると、あとで全面修正になります。
変数で持っていれば、外形や板厚を変えても全体の整合が崩れにくく、試作2号機、3号機がぐっと現実的になります。

防水・防塵が必要な用途なら、形を描く前にどのIP等級を狙うのかを先に決めてください。
IEC 60529ベースのIPコードは、粉じんへの保護と水への保護を別々に定義しています。
つまり、屋外での飛沫対策なのか、粉じん環境なのか、一時的な水没まで含めるのかで、設計対象が変わります。
フタの合わせ面だけ詰めても足りず、ガスケット溝、ケーブルグランド、必要なら内部のドレン処理までセットで考える必要があります。

ここで見落としやすいのが、検証計画も設計の一部だという点です。
たとえばケーブルを通すなら、ケーブルグランドを入れるのか、固定コネクタ化するのかで侵入口の条件が変わります。
内部に結露や浸入水が残る可能性があるなら、ドレンの逃がし方まで先に決めておいたほうが、現物合わせのやり直しが減ります。
防滴ケースは見た目が閉じていれば成立するわけではなく、要求、構造、試験を同じ図面の上でそろえて初めて実用品になります。

読むと役立つリソース

方式選びを整理したいなら、まずFormlabsの3Dプリンター価格帯と方式解説が役立ちます。
個人向けの樹脂・フィラメント機が約200〜1,000ドル帯、プロ向けが2,000〜10,000ドル帯という整理は、FDMと光造形を「何となく」で選ばないための基準になります。
ホビー機から一歩進んだ導入感まで含めて見たいなら、Fusion3 Designの価格レンジ比較も合わせて読むと、自分がどの層の機材を前提に設計するのかが見えます。

ケース設計そのものの指針には、Protolabs Networkの3Dプリント設計ガイドが有効です。
肉厚、内部クリアランス、穴まわりの考え方が整理されていて、箱物を描くときの初期条件を言語化できます。
ポートまわりやPCBの逃がしを詰める段階では、Versa Electronics系のエンクロージャ設計記事も読む価値があります。
コネクタ開口や基板周辺の余白は、見た目以上にトラブル源なので、寸法の置き方を他人の設計例から学ぶと視野が広がります。

防水寄りの実例を追いたいなら、Hackaday.ioのエンクロージャ実験記事のように、実際にケースを水へ入れて評価している記録が参考になります。
たとえば150 × 100 × 60 mmのケースを10分完全浸水させるような検証設計は、IP等級の理解を現物試験へつなぐ発想として勉強になります。
規格名だけ追うより、どういう構造をどう試しているかを見るほうが、次の自作に落とし込みやすいです。

測定まわりも一段深く見ておくと、作業の精度が変わります。
Mitutoyo系のデジタルノギス情報に触れておくと、0.01 mmの表示がそのまま実効精度ではない、という感覚が持てます。
表示桁ではなく器差を見る習慣がつくと、採寸した数字をCADへ入れるときの信頼度が上がります。
電子工作のケース作りは、プリンター選びだけでなく、測る文化まで含めて育てると一気に安定します。

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田中 悠斗

学生時代からFabLabに通い、3Dプリンタや電子工作を独学で習得。Maker Faire Tokyo出展経験あり。工具選びやパーツの比較レビューを中心に、実際に手を動かして検証した記事を執筆。